ちょっぴり切ない思い出

By | 2014年11月8日

「どうしてどうして僕たちは出会ってしまったのだろう」そんなユーミンの歌が流行った年に私たちは知り合った。きっかけは会社の面接。彼は私は志望していた企業で面接官をつとめていた。彼の隣りに座っていたいじわるそうなおじさんが私にこう聞いてきた。「どうしてうちを選んだの。ほかにもっといい会社もあるでしょう。」と。なんだかずいぶんな言い方をするひとだな、と私はムッとしながらも強気に志望動機を答えた。そのときのことをのちに彼が「なんだかジャンヌダルクみたいでかっこよかったよ」と笑いながら言ってたっけ。無事にその会社に入り、私はがむしゃらに仕事に取り組んだ。ある日私は上司だった彼に食事に誘われた。「いつも遅くまで頑張ってくれているごほうびだ」と言って、高そうなレストランで食事をごちそうになった。どんな話をしたのだろう。仕事の悩みだったのか、学生時代の思い出だったのか。くわしく覚えてはいないものの、ひとつだけ彼が私のことを熱い目で見ていたという記憶は残っている。車で送ってもらった帰りみち。彼が突然打ち明けてきた。「実は面接ではじめて君をみたときから、ずっと好きだった」と。まだ幼さの残っていた当時の私には、10歳以上も歳の離れた、しかも会社の上司からの愛の告白なんてまったく寝耳に水だった。びっくりして彼の顔をみつめると彼はだまって私の頬におやすみのキスをした。あまりの急展開に頭がくらくらするくらいに驚いた。それでも私は彼の思いを受け入れることにした。彼は心の底から私を愛してくれた。それから数年間私たちは周りの目をぬすんでは、いろいろな場所に遊びに行った。おいしいものを食べたり、映画をみて涙を流したり、楽しい時間をともにすごした。二人のあいだの多少の歳の差などまったく気にならなかった。結局彼との交際は、彼の転勤がきっかけで終わりになってしまった。けれどいまでも私の胸の中には宝物のようにキラキラと当時の思い出が光っている。